災害時の発電設備への給油で、社会インフラをサポート

EESS(エス)とは、大規模災害が発生した際、顧客の事業を継続させるために、ビルなどに付随する発電設備に給油する大規模災害時エネルギーサポート事業を指す。同社はこのビジネスのパイオニア的存在であり、今ではBCP(事業継続計画)対策の一環として、多くの企業や施設に活用されている。「弊社は1967年にガソリンスタンドを創業。1970年頃から始まったみなとみらいの開発により建設機械の燃料需要に合わせて事業を拡大し、現在もこの事業を主力としています。EESSが生まれるきっかけになったのは1995年。阪神・淡路大震災が発生した際、前代表が被災地で役立つ事業として考案したのが始まりです。契約方法やサービス体制などを模索しながら営業していく中で、2000年に伊豆諸島の三宅島が噴火。NTTのグループ企業からの要請で、初めての災害対応を行いました」

その後、新潟県中越地震などでも活躍し、東日本大震災の際は100台もの車両を被災地へ派遣したことで、その存在を広く知らしめることになった。三和エナジーがさらに飛躍する転機になったのは、2017年に長距離トラックを対象に石油製品を販売する宇佐美グループの傘下に入ったこと。その翌年、宇佐美で神奈川支店や山陽支店の支店長を歴任してきた高松氏が、三和エナジーの代表取締役社長に抜擢された。その後、それまで関東や東北を中心とした営業地域を、提携先の開拓やM&Aを通じて全国へ拡大。昨年は、西日本最大規模を誇る同業のヒラオカ石油をグループに迎え入れた。その結果、EESSの売上は高松氏の社長就任時と比べて4~5倍に増え、現在も成長を続けている。

「弊社の強みは“調達力” “実行力” “備え”の3つ。“調達力”は、宇佐美グループは石油元売会社との関係性が強いため、大規模災害時でも重油や軽油などの石油製品を十分に確保できることを意味します。“実行力”は、全国53カ所の拠点、530台のタンクローリー、約700名の従業員という規模によって、任務を迅速に遂行できること。主力のパトロール給油とEESSの二毛作事業であることが特徴です。年1~2回の頻度で、お客様のところへ出向いて合同で行う災害対応訓練も、実行力を支えています」

これらの強みだけでも圧倒的なシェアを誇るが、3つ目の強みになっているのが、災害前の段階から顧客の要望に応える

“備え”のサービス。それが、災害前の準備に着目した、ロカクリーンと呼ばれる事業だ。発電設備にはA重油の入ったタンクがあり、使わない期間が長く続くと、タンク内に水分やスラッジ(不純物)、錆などが生じて発電機が稼動しないことがある。それを防ぐためにタンクからA重油を抜き、ろ過した後に戻す方法を考え、自社開発のろ過装置は特許も取得した。全量の3割をろ過するとタンク内のA重油はほぼきれいになり、3~5年毎に行うことで発電設備は問題なく稼働する。

製造から供給まで一手に担い、 SDGsに貢献するバイオ事業

「EESSのお客様は、電力会社、電気通信事業、データセンターを保有する企業が中心。特にデータセンターは年々規模が大きくなり増加中です。つまり、私たちが出動しなければ、携帯電話やスマートフォンがつながらなくなるという非常事態も起こり得るのです。ですから私たちは、台風で倒れた木が道路を塞いでいても、木にワイヤーをひっかけて移動させるなど、とにかく運ぶんだという強い使命感で尽力しています。手前味噌ながら“日本の有事にわが社あり”で、災害地で多くの方々に感謝されることが、従業員の大きな誇りにつながっています」

 また、EESSと同様に期待されているのがバイオ事業である。パトロール給油の主な顧客となるゼネコンから、カーボンニュートラルを実現させたいという要望を受けて始めたものだ。2030年までに、CO2排出量を2013年比で50%削減することを実現するために、わずかに届かない5%分を燃料の見直しで行う。三和エナジーはバイオ燃料製造に着手することを決め、2023年6月にはプラントの完成を予定している。「バイオ燃料を製造する会社は多数ありますが、弊社の特徴は530台の車両をもっていること。ガソリンの需要減で、ガソリンスタンドの数はピーク時の6万5000軒から半分以下に減り、配送する車両も激減しています。今では運べる能力というものが希少価値になっており、製造から配送まで一気通貫で行うバイオ事業は、真似するのが難しい事業だといえます」

 今後の目標は、バイオ事業も含め拠点がないエリアにも積極的に進出し、現在の倍くらいの規模となるネットワークを構築すること。そのためのM&Aも進めるが、EESSやバイオ事業が注目を集めるようになって以来、新卒採用では予想以上の応募があるという。世の中や地球環境問題に役立つ業務が志望動機になっている追い風を受け、人材育成もしっかり行いながら、堅調な成長を目指していく。