現在の仕事についた経緯
高校卒業後に会計の道を志しましたが、バブルの崩壊や平成大不況などで実家のシャツ縫製工場が廃業の危機に陥り、会計の道は諦めて実家の縫製工場を建て直すことにしました。
しかし既に国内では製造業は難しい状況で、シャツ工場であることに限界を感じました。そこで、製造するだけではなく、ブランド力を付け、価値の高い製品を製造することを目指しました。
自社ブランド品として、シャツの中でも価値を創造しやすく在庫などを抱えなくて良いオーダーシャツに特化することが一番だと考え、その日から最高品質のオーダーシャツを目指し、日夜、良いシャツを作ることに邁進し、奮闘し続けて今に至ります。
仕事へのこだわり
仕事に関しては、まず職人として、当然ながらシャツの品質を向上させることを最優先に取り組んできました。良い品質の服を作ることが何よりも最優先です。
シャツの品質を上げるためには、まずは設計に拘らないといけません。建築と同じように服も設計されますが、シャツは人間の身体を包みますので、“ゆとり分”という運動量を追加しなければなりません。その運動量は、着用される方によって、個人差や好み、スタイルの違いなどがあり、それをセンスと経験で磨き続ける必要があります。
良い服を作るためには、まず設計を徹底的に磨く必要があり、その勉強は一生続きます。さらには流行というものがあり、磨いた上に、最新の流行を取り入れる必要がありますので、常にアンテナを張っています。
私は経営者でもありますので、品質を上げて、なおかつ価格を少しでも抑え、数を増やしていくことも大事にしています。たくさんの方のご希望に添うことができて、はじめて“企業”だと私は思っておりますので、良い品質に拘ると同時に、生産数と販売数を増やしています。人も機械も増やして育て、クオリティを上げていかないと、いつか潰れてしまう、そんな気持ちで常に取り組んできました。
そして、もう一つ、“ただ良い品質”だけでは足りません。良い品質で、ど真ん中の製品を作り販売することが求められます。正統派で、ど真ん中の製品を作りつつ、プラスしてユニークな製品も作り続ける、その両方に拘って、企業として成長してきました。そんな文化としての企業、そこに魅力を感じて欲しいと思います。
若者へのメッセージ
今は、日本での製造業が少なくなり、コンピューターでモノが設計され、海外で実際に作られるような時代です。現場は遠くなり、実際に作業をしたことがない人が設計して指示を出す、そんなことが当たり前になりつつあります。求められる専門知識も高度になり、対応できるか否かで人材にも大きな格差が生まれます。
また、深い知識があっても、その分、視野が狭くなってしまっては、良いモノを作り出すことが出来ません。実に、複雑な時代です。
そんな時代ですが、ある意味では以前と変わらないと思います。良いモノを作り出すためには、実際に自分で使ってみること、作ってみることが大事です。この点はどんなに時代が変わっても、変わることはないと思います。
たまには現場に足を運んだり、自分でモノを使ってみたり、他者の作った製品も使ってみたりして、その価値を確かめてみて欲しいと思います。
モノを生み出す楽しさ、人から必要とされる嬉しさ、そのための限りない知識、それらに伴う誇り、さらにはそんな大事なことを時には捨て去る勇気、その全てをもって、今の厳しい時代を楽しく歩んで欲しいです。