現在の仕事についた経緯

父が3代目として白金鍍金工業の代表をしており、家業を継ぐにあたり、めっきの知識と経験の習得のために、早稲田大学先進理工学部応用化学科に入学しました。大学ではペースメーカーに電気を供給するための熱電変換素子(体温と外気温の差で発電するデバイス)をめっきで作成する研究(基礎実験)をしていました。当時の“起こった事象を細かく残す”という習慣が、現在の塗装事業の立ち上げや新規開発に活きていると思います。
大学卒業後は、アイシン精機株式会社(現 株式会社アイシン)様、奥野製薬工業株式会社様、株式会社中央製作所様、株式会社スイレイ様で、生産管理・原価管理やめっき薬品、設備、排水処理の実務を積み、当社に入社いたしました。

仕事へのこだわり

2023年に代表取締役に就任し、同時に日本ものづくり事業承継投資株式会社と資本提携しました。今は彼らと共に、代表取締役として「会社の成長」と「従業員が健康で家族との時間が取れる」を両立させられるよう尽力しています。
経営方針に関しては、売上拡大、原価改善、生産・品質向上、従業員第一、リスク管理の5つを定めて、それぞれの取組事項(具体的な活動項目)を役員・執行役員とすり合わせ、課題解決を共に進めています。

品質向上の取組事項の一例ですが、昨年、客先への不良流出ゼロを目指して、めっき画像検査装置を導入しました。通常、めっき製品の品質保証は全数目視検査で行っていますが、人による保証ですと体調等により、流出不良が一定数(何千万個に1個ですが)発生してしまう可能性がありました。
めっき製品への画像検査は光の反射が傷などの不良と誤判定されやすいため、導入ハードルは高かったものの、当社ではAIディープラーニングを使うことにより、検査精度がかなり向上し、目視検査からの切替が可能になりました。対象製品については、人による保証から機械による保証となり、よりお客様への品質保証度が向上し、ご満足いただいております。

またリスク管理の例ですが、めっきは環境負荷が高いイメージを持たれやすいため、環境への取り組みを行ってきました。最終工程で6価クロムを使わない、ダーク3価めっきや塩害対応白3価めっきなどの量産対応や、太陽光発電や排水リサイクル設備の導入などを行っています。また、ニッケルアレルギー対策としてニッケルフリーめっきや抗菌めっき等の試作を行っています。今後も引き続き、環境問題・社会問題を解決する糸口を提供できればと思っております。

最後に従業員第一に関しては、残業時間抑制のためのノー残業デーの導入や、スキル・生産性向上のためのWebを使った階層別教育を導入を行ってきました。また、やったもん勝ち(周りを巻き込んで、会社の利益に大きく貢献した人を総会で表彰し報奨金を渡す)の導入により、より会社と従業員の方向性が合ってきたと思っています。

これからも従業員、お客様などステークホルダーからより良い会社と思ってもらえる企業を目指し、頑張っていきたいと思っています。

若者へのメッセージ

学生を卒業して、社会人になっても学び続けることは大切です。どんな仕事に就いたとしても、新しい事を学び続けることで、その知識や経験が自分を助けてくれます。自分の可能性を広げることもできます。ぜひ興味のある分野やスキルを積極的に学んでください。

当社では、今年から従業員のスキルアップのために、ベネフィットステーションのWebラーニングを階層別教育(新入社員~経営層まで)として取り入れました。従業員に積極的に受講してもらっていますが、人事管理から組織マネジメント、経営戦略まで、仕事を進める上で必要な幅広い知識が身に着けられるため、自分の学習としても使っており、実務を進める上でもとても参考になっています。

また、どんな仕事に就いたとしても、今の自分に満足せず、常に自分を改善しようとする姿勢を持ってほしいです。その一つ一つは小さな改善でも、毎日積み重ね、継続することで大きな成果・成長になるかと思います。

当社で行っている原価低減活動も、1つ1つは小さな改善でした。廃棄品として捨てていたものを1つずつリサイクルできるようにし、材料や工数のロスの潰しこみも1つずつ行っていきました。その結果、年間で数億円の原価改善につなげることができました。実直に、少しずつでも、長い年月を積み上げることで大きな成果になるものと思っています。