発想を磨く

私は実は「頑張る」ことや「一生懸命」が好きではないのです。一生懸命に取り組めば結果が多少よくなるのは当然のこと。しかし、大事なのは発想を磨くことです。そのため私は普段からさまざまな本や新聞など活字を読むようにしています。それらで得た知識は経験と見聞をもとに検証しなければいけない。教科書のような知識に留まってはいけないという思いもありましたので、私は今まで日本各地や世界82カ国を巡って、さまざまな方と対談してきました。

アパホテルはなぜ生まれたか

私の父は病気をきっかけに持っていた工場を閉鎖したのですが、使わなくなった工場の空間を活用し、不動産賃貸業に着手しました。私は入居者募集のチラシを貼ったり家賃の集金に行くなどして、たくさんの学びを得ました。これこそ私のビジネスの原点です。住宅は人の努力の目標物ですから、造って提供することにはやりがいを感じました。しかし、当時はなかなか家が建てられない時代だったんです。一生懸命頑張っても自己資金が半分以上ないと後の資金調達が難しくてできない。住宅産業の問題は技術面ではなく資金面にあったのです。そこで私は長期住宅ローン制度を確立しました。そしてキャリアを活かし、信用金庫の関係不動産会社として独立したのが成功を収めました。一方で、利益が出ると高い税金が発生するので節税についても考えなければいけません。その過程で、利益率の面から見るとホテルが最もいい選択肢だと思いました。つまり、もともとホテル事業は節税のために始めたのです。

事業成功の源泉

ホテルでどう成功するかを考えていた際に思いついたのが会員システムです。普通なら簡単に会員は増えませんが、私はキャッシュバックシステムを組み込みました。会社員の方々からの好評を得て会員は徐々に増加。アパホテルの利益率が世界一を誇る理由はこういった点にあるのです。加えて、宿泊客はホテルに滞在しつつ、食事や買い物に行くことがあります。24時間明かりがついており、人もいる。つまり、ホテルの存在は治安の維持につながります。ホテルを中心に周辺地域を賑わせ、いい影響を与えているので誇りに思っています。