現在の仕事についた経緯

これまで経験してきたSI事業とは、全く違うアニメの世界に足を踏み入れることを決断した背景と理由について、以下に記述します。

日本のアニメ産業は約3兆円規模で我が国の数少ない成長産業であることにに加えて、インバウンド需要にも大きく影響を与える我が国の文化的要素も併せ持つ珍しい産業群です。
他産業への波及効果を勘案すると産業規模は、もっと大きいのが実態でしょう。

実は、私の身近にアニメスタジオの経営者がいます。この方を通して、アニメ産業の様々な立場の方々と接点が生まれ、この成長産業のいくつかの構造的課題を知りました。中でも特に深刻なのがクリエイターを取り巻く環境です。私が属していたITの世界や他の産業と比べて、比較にならないほど過酷です。この他産業に著しく劣後する報酬や労働条件、そして商習慣等を改善することは、クリエイターの量的拡大と質的向上に寄与し、アニメ産業の最も基本的な産業基盤の強化となり、しいては成長産業としての持続的成長に繋がるのではと考えています。私は、自身のこれまでの経験と知見をもって、その一助となる事を目指し、新たな会社の設立に至りました。まずは、クリエイターの収入源の間口を広げる為に彼らが保有するアニメの表現力や技術力を企業システムに生かし、企業の付加価値アップに貢献させることから取り組みを始めました。

仕事へのこだわり

私がこれまでの仕事の中で、重視してきたことは、信頼関係と好奇心です。

信頼関係というのは、社内外を問わず共に仕事をさせて頂いた方々との共感であり相互リスペクトです。仕事を通してもたらされる最大の喜びですね。そして醸成された信頼関係は、更に大きな仕事に結実する源泉となります。ただこの信頼関係というのは、少し時間を要します。また良い時ばかりではなく悪い時も共にして乗り越えた結果です。

私にも仕事を通しておそらく一生お付き合いをさせて頂くであろうと思われる方々が社内外にいます。私の財産であり、自慢です。今後アニメという新しいフィールドで初めて接する方々と新たな信頼関係を構築することは、とても楽しみな事なのです。

そして好奇心ですが、俗っぽくいうと野次馬根性です。何か面白いことがないか、いろんな場所に顔をだして、自身の好奇心の琴線に触れるものを見つけに行く、とても能動的な行為を伴うものです。組織の中には、珍しいモノを啄んでくる社員がたまにいます。こういった社員はとても貴重です。新商品の開発や新たな市場開拓はほとんどの場合、こういったことから始まるんですね。ただ私自身が啄んでくることが好きだったこともありますが、上司にこういった姿勢がないと社員は啄んできません。なぜなら一般的には現在の仕事に直接関係ない場合が多いからです。従って、上司の姿勢・メンタリティ次第で、好奇心旺盛な社員の可能性のみならず、新しい事業の機会を逸することになるのです。

若者へのメッセージ

最近、特に若者に伝えているメッセージは、二つあります。

一つ目が、「皆さんは、皆さんが思っている以上に優秀だ」ということです。
最近の学生は、大学でよく勉強して入社されてくる優秀な方がとても多いように感じます。私の頃は、ほとんどの学生はあまり勉強をしてきていませんでした(と思います)。にもかかわらず一方で現在はいろいろな情報が簡単に手に入るせいか、皆さんと同世代の方が早く出世したり、起業されたり等といった情報に触れると、つい焦って自分の力量を過小評価してしまうように思います。そういう必要は全くありません。若い時は、「自分ならやれるっしょ!」という根拠のない自信が最強の武器です。このメンタリティがとても重要ですよ。

二つ目は、「リミッターを外せ!」ということです。
これは、私が現場で最後に担当した組織のスロ-ガンです。私がこれまで係わってきたSI事業というのは、リスク管理が一番の肝です。なぜなら一つの案件が数億、数十億になりますので、リスク管理が不十分だと、大きなコストが発生し事業に多大なる影響を与えるからです。実はSIerが新たな事業創出が苦手な根本的理由がこの(過度な)リスク管理です。現状を打破し、新たな成長を求めるのであれば、リスク管理は、疎外要因になりかねません。若い皆さんは、リスク管理より可能性に挑戦してください。社会にでて、経験を積むと知らない間に、自ら自身の限界を設定してしまいがちです。皆さんの可能性は無限大なのです。