現在の仕事についた経緯

Onの仕事に関わることになり、嫌々ながら走ることになった2013年1月のことです。はじめて10kmを超える距離を走りました。そのランニングから戻り、シャワーを浴びて冷蔵庫を開けたとき、たまたま買っておいた1本のクラフトビールが目に入りました。それを飲んだときのおいしさは、今でもよく覚えています。
それまでの僕にとってビールというものは、会社の愚痴や上司の悪口を言うために、同僚と「とりあえず」頼む飲み物に過ぎませんでした。ですが、あのビールはそうではなかった。たとえ小さくとも、自分の挑戦や達成を祝福する一杯でした。
あのビールの味をまた知りたい、そう思いながら僕は仕事を続けてきました。Onの仕事を引退した僕が、次の仕事としてクラフトビールを選んだのは自然なことだったと思います。

仕事へのこだわり

2015年5月にOnジャパンを立ち上げて以来、僕は仕事とプライベートの境目を限りなく曖昧にして生きてきました。文字通り知名度ゼロのスポーツブランドを、日本におけるトップブランドにするという不可能に思える仕事を、僕のような凡人がやり切るためには、おそらく魂を賭ける必要があったからです。
そのように生きていると、「仕事へのこだわり」というものは、そのまま「生き方」となっていきました。仕事とは人生の一部であり、仕事におけるこだわりというのは、僕自身の人生における信念と同一のものになっていったからです。その上で、僕の仕事へのこだわり、すなわち人生における信念とは、このようなものです。これは、今も変わりません。

・自分自身を信じ、尊重し、愛すること。それができてはじめて、仲間やコミュニティを愛することができる。
・問題が起きたときでも慌てず騒がず、深く一度呼吸をして心の平穏を保つこと。
・怖がってもいい。不安になってもいい。その恐怖や不安に真っ直ぐに向き合い、「それでは俺はどうしたいんだ?」と自問自答する勇気を持つこと。
・一度決断したのなら、心穏やかに、心に決めたことを淡々と積み重ねること。
・自分に無いものを数えることをやめ、いま持っているものや、それをもたらしてくれた人たちに深く感謝すること。
・率直に、透明に、できる限り誠実に人に接すること。接する相手によって、言葉を変えないこと。
・まずは行動すること。自らの行動を通じて自分自身を鼓舞し、それがいつか人の魂に火を灯すと信じること。
・誰かが決めた常識や枠組みを鵜呑みにせず、「こうあるべき」という固定観念や同調圧力から離れてみること。
・自由な遊び心と少々の反骨心を持って、信じた道を力強く、堂々と進むこと。

「SDGs」についての取り組み・考えなど

SDGsとは、単なるマーケティング的なお題目では意味がありません。日々の行動や経済活動に直結した上で、しかもそれが苦痛でなく、楽しいものでなければ続きません。
僕はクラフトビールにおける「クラフト」とは、「手作り」という意味を越えて、「人と人の繋がり」を意味するものと考えています。それが具体的な形として現れるとき、自然とSDGsの考え方に近づくように感じています。
まだYellow Monkey Brewingは醸造すら開始していない立ち上がったばかりのブルワリーですが、醸造がスタートしたならば、下記のような取り組みを行うことを決めています。

・熱海のダイダイ農家や、小田原市のレモン農家とパートナーシップを結び、廃棄されてしまうはずの不揃い、あるいは傷のある果物を使ったビールの醸造を定期的に行おうと考えています。
・ビールの醸造過程で排出される「モルト粕」は栄養価が高いのですが、通常であれば産業廃棄物として廃棄されてしまいます。このモルト粕を地元の養鶏農家に引き取っていただき、鶏の飼育に役立てていただこうと考えています。これにより、Yellow Monkey Brewingは産業廃棄物としてモルト粕を捨てる費用を節約でき、養鶏農家は飼料購入費を軽減でき、さらに全体的に見ればゴミの排出量も減らすことができます。
・このモルト粕を使用した「クラフトビールペーパー」を作っている会社とパートナーシップを結び、社員の名刺やビールのパッケージのダンボールなどに、これを使用します。

若者へのメッセージ

大人のように見える人でも、実は迷いながら生きているものです。僕は今46歳ですが、「46歳の自分」を生きるのは初めてです。これまで生きてきた中で、自分なりの信念や生き方の「型」のようなものは持っていますが、それでも迷うことは多々あります。
その意味で、皆さんと全く同じです。だから、アドバイスを送るというより、共に楽しみながら生きていけたらと思っています。そして、いつかご縁があり出会うことがあったなら、スポーツとビールを楽しみながら、皆さんのお話を聞けたら嬉しいですね。