脳出血を救った私のブーツ

今日では、生活にかかわる価値観の変化や、ライフスタイルの多様化に拍車がかかっている。それは健常者だけでなく、身体障がい者や歩行困難な方々も然り。しかし、一旦、身体的に不自由な状態なってしまうと環境は著しく異なる。

私はある日、突然、脳出血により、身体障がい者になってしまい、本当に精神的にも肉体的にもこれ以上の不幸はないと思われる程、究極的のどん底の生活だった。家族は主治医から「おそらく寝たきりの生活になるだろう。せいぜい車イスによる移動ができたら……」と言われ、この現実を受けとめる覚悟を求められた。

1年間という長い入院生活を経て、両親と生活することになる。必死のリハビリだった。脳出血になる前は私は右利きだった。今でこそ、下手だが字を書けるようになっているが、ある日突然、右手が使えなくなったのだ。これは正しく絶望の極み。右半身麻痺の右手、右足もそうだが、正常な頃と比較して感度が40%程度になる。痛みも弱くなる。劇的に変わり果てた手、足の存在が不憫に思えた。手のリハビリは一生続く…入院した当初は車いすだった。2~3か月経って車いすと装具でリハビリが始まった。通常の患者は膝より短い装具だったが、私は足の腿まであるタイプ。それを見た時、私の足は余程、悪いのだと感じた。医師は今は長い装具でも徐々に短くするからねと言った。
失語症でも絶望に打ちのめされた。声が出ているが、思っていることをどのように伝えれば良いのか、わからない。「あいうえお かきくけこ」からはじまり、次は単語の練習をした。文章で話せるようになったのは発症から3〜4年後ことだったと記憶している。

足のリハビリも失語症も一生続くのだ。絶望の淵から少しづつ回復して、安定期になり、普通の生活を始めると、私は環境のギャップに戸惑い、苦しめられることになる。
たとえば生活のもとになる靴では、健常者のマーケティングはかなり進化している。性別×年齢×価値観×ライフスタイルなど多岐にわたる選択肢が提供されている。しかし、身体障がい者になった途端、一切の選択肢はなくなる。マーケティングでは当然である性別の選択肢もない。ましてや年齢もなく、もちろん、価値観やライフスタイルを想定しているような靴類など存在するはずもない。食事に行きたいと思っても、当時は既製品の靴類は食事に行けるようなものではなく、せいぜいご近所に履いていくのが精一杯の布製の靴しかなかった。

身体障がい者になって私は、多くの選択肢を失うことだと初めて気づいた。何よりも着たい服が着られない、履きたい靴類が履けないということは女性にとって行動を制限することとなる。特に安定期の身体障がい者にとって、外に出て行動したくなるような靴、ブーツの存在は本当に大きい。ところが身体障がい者になった人の価値観やライフスタイルは、まったく考慮されていないのだ。身体障がい者になったのだから、もう食事、旅行、華やかな場所に行くことはないだろうと。私は、今まで本当に大事にしてきた自身の価値観、自身のライフスタイルを堅持することを諦めることしかないということを悟った。私はこうして身体障がい者が、心を含めた障がい者になっていくのを感じとった。

身体障がい者に洗練されたファッション性のあるブーツ、靴を自分で作ることで、自分にも社会にも貢献できるのではないかと考えた。
実は私は、ブーツがあるから、今の私があると思っている。
ブーツ、靴は、行動することの象徴。ブーツ、靴は外で活動するための原点。ブーツ、靴は機能的には外で足を守り、意味的には自己表現の手段である。自分がどのように自分を表現したいのかを、レ ボットゥ ドゥ ノリの客観的見地からレ ボットゥ ドゥ ノリのブーツ、靴から自己表現の在り方を探っていく。

当初、私はインターネットで装着用の本革製ブーツを探したが、存在しないことを知った。私は右半身麻痺なので、右足に装具を装着している。そのため、右足と左足の大きさが極端に異なる。右足と左足が極端に異なるブーツや靴はハンドメイドのブーツ、靴以外にないと確信した。何度も何度もインターネットでハンドメイドのブーツ、靴を探したことを今でも覚えている。ネットで探すことを諦めはじめた頃、私にとっては本当に切実な悩みだったので、義肢装具研究所の装具士に依頼し、私の装具にサイズが合うブーツを私がデザインし、機能面も考案しハンドメイドブーツを造っていただいた。
そのブーツを履いたことで、長年履けなかったスカートも履けるようになった。その前は装具を着けているため、装具が露わになり履くことが出来なかったのである。ブーツだけではなく、自己表現もファッションも著しく変わった。
このことは、どれだけ病気の後遺症に悩み失意のどん底にいた私を救ってくれたことか……。私は本当に靴が大好きだったので前の自分に戻ったような気持ちになり、やっと前向きな笑顔を取り戻した。リハビリに、交友に行動的になり、今までの世界とは違う世界を体感したのだった。

私の自由と自立の象徴、クロエ

自身がデザイン、機能面も考案したブーツを履いたことでまだ、前例ない分野のハンドメイドのブーツ業界のNO.1となるビジョンを得た。自由にモノ造りを担う権利を得た。私と同じ感覚をお持ち方々に向けたターゲットの開拓をすることで私の自身の自立を得た。
私自身が履きたいデザイン、機能面も考案したブーツを自分自身で選択肢をつくった自由、ブーツを履いていきいきと行動することで得た自由、行動して元気になった自由と自立。もちろん、私とは違う価値観、ライフスタイルを持った身体障がい者も多いと思うが、私はそういう価値観、ライフスタイルを持つ方々にも選択肢の一つとして提供していきたいと願っている。

実は私は身体障がい者になってから、はじめて愛犬クロエ(仏語 CHLOÉ フランス人が女の子に付けるポピュラーな名前、全盛という意味もあり)を飼った。今ではクロエも13歳になり、立派なバーバワンコになった。障がい者は人に支えて頂くことが多い。しかし、人に支えていただくばかりの生活ではなく、私を何か助けて頂く方々にも、クロエに対しても自身が出来ることをしていきたいと誓った。
身体障がい者の私が犬を飼うことに強い反発を受けた。しかし、私ははじめから無理だと決めつけるのではなく、なんとか少しずつ、できそうなことで自身が熱望することには挑戦していきたいと思った。クロエは私にとって自由と自立の象徴のような存在である。実は私は後で知ったのだが、特許庁の初めての特許申請書日とクロエの誕生日は同じ日だったのである。何故か私は運命的ものを感じクロエをレ ボットゥ ドゥ ノリのマスコットして採用することしたのである。

私自身がそうであるように身体障がい者や歩行困難な方々に自由と自立のお手伝いするレ ボットゥ ドゥ ノリ事業も然り。
レ ボットゥ ドゥ ノリの理念は、勇気とは窮地に陥ったときにみせる、気品のこと。
Courage is grace under pressure(ヘミングウェイ)をモットーに事業展開を図る。
身体障がい者や歩行困難な方々(窮地に陥った方々)や健常者の方々にも機能性に優れた履きやすく、魅力的で気品を与えるデザインされたハンドメイドブーツ、靴などを提供していく。
窮地に陥った方々など元気を与えて積極的行動していただくことをレ ボットゥ ドゥ ノリの理念として事業展開を図る。

「レ ボットゥ ドゥ ノリ LES BOTTES DE NORI」
米国からもたらされたユニバーサルデザインという概念は「健常者にも、身体障がい者にも」優しいデザインの商品、機能的ユニバーサルデザインブーツを提供する会社を指す。
「レ ボットゥ ドゥ ノリ LES BOTTES DE NORI」は、私の様に身体障がいがある方々、歩行困難な方々、健常者にハンドメイドブーツを提供していく。
今や身体障がい者や歩行困難な方々、健常者にもライフスタイルや価値観に真摯に目を向けたブランドとして活動している。

レ ボットゥ ドゥ ノリは義肢装具研究所の装具士がお客様の足のサイズを計測し、歩き方を観察してインソールなどの付属品を判断し、自分のサイズに合う、快適なブーツを提供している。高い機能性を追求し、洗練されたデザイン性を併せ持ったブーツである。装具を装着する為、スカートを履けなかった方々にも、健常者でもむくみやすい足の方々にも対応するブーツである。
例えば、ダブルジッパー メッシュブーツは間口が広く、片手で着脱が可能。通気性が良く、1年爽快感を満喫するブーツ。
ホールインワンブーツ スウェード ダークグリーンは、健常者であっても朝はスッキリしている足も夕方はむくみが酷いといった悩みを解決するブーツである。

購入までの手続きの流れは以下の通り。

■健康保険か、国民健康保険いずれをお持ちで、外と内で補装具を着用しなければなれないケース
①のケースは医師(リハビリの医師、整形外科医、脳外科医など)の証明書とその医師の措定の義肢装具研究所の外用補装具(当該義肢装具研究所が当該者の足を計測し、歩き方観察してインソールなどの付属品を選定し、レ ボットゥ ドゥ ノリのブーツ、靴を製作)の当該者がお支払いした領収書あれば、区市町村に提出すれば良い。3〜4カ月で当該者に領収書の額が戻って来る。今は全国の医療費が多く医師の証明書があっても却下されることがある。
レボッゥドゥノリのブーツ、靴が出来る前に義肢装具研究所に代金をお支払いすることが必要。

■外反母趾や扁平足などで足に問題あるケース
②のケースはリハビの医師、整形外科医などの証明書とその医師の措定の義肢装具研究所の外用補装具(当該義肢装具研究所が当該者の足を計測し、歩き方観察してインソールなどの付属品を選定し、レ ボットゥ ドゥ ノリのブーツ、靴はレ ボットゥ ドゥ ノリが製作)の当該者がお支払いした領収書あれば、区市町村に提出すれば良い。3〜4カ月で当該者に領収書の額が戻って来る。今は全国の医療費が多く医師の証明書があっても却下されることがある。
レ ボットゥ ドゥ ノリのブーツ、靴が出来る前に義肢装具研究所に代金をお支払いすることが必要。

■一般的な(健常者で足に特に問題にない)ケース
特に足に問題がないケースを指す。レ ボットゥ ドゥ ノリが当該者の足を計測し、レ ボットゥ ドゥ ノリがブーツ、靴を製作。計測時にレ ボットゥ ドゥ ノリのブーツ、靴の値段が1/2、完成時に1/2がレ ボットゥ ドゥ ノリに支払われる。必要があれば、歩き方観察してインソールなどの付属品を選定する。

レ ボットゥ ドゥ ノリのブーツ、靴は、日本発、洗練された機能性ユニバーサルデザインブーツ、靴である。
高い機能性を追求し、洗練されたデザイン性を併せ持ったブーツ、靴である。
身体障がい者、歩行困難な方々に健常者の方々にも心身とも元気になり、行動していただくことがレ ボットゥ ドゥ ノリの切実なる願いである。