現在の仕事についた経緯

祖母の死去がきっかけで、いずれ継ぐことにしていた家業を継ぐ為、勤めていた広告代理店を退社して有限会社丸三漆器に入社しました。
家業は秀衡塗という漆器を作る工房で、木地から製品まで仕上げる工程が可能な希少な工房でしたので、幼少の頃から一から出来上がる漆器を近くで見てきました。
秀衡塗という漆器は製造元が少なく、地域の伝統工芸品として残していくことは、日本の伝統を守る上で尊い使命だと思いました。

仕事へのこだわり

仕事をする上で変わらずに掲げている理念は「秀衡塗を後世に残し、現代の生活に合った漆器をつくる」ということです。
秀衡塗を残していくために、秀衡模様を描ける職人の育成と、現代の生活に合った商品開発を軸に漆器づくりをしています。
弟が塗りの職人をしており、私がデザインした物を形にします。兄弟で話し合いながら漆器づくりができる環境にとても感謝しています。父も現在職人として漆器づくりをしているため、父からも商品開発のアドバイスをもらいます。「商品開発をし続けることが大事」という父の言葉は、120年の歴史からも、今5代目を継いでいる私の立場でも大切なことだと感じています。
初代ではお膳作り、2代目は模様の入った漆器作り、3代目は秀衡塗、先代の父の代にはガラスに漆を塗った漆器と、各代でその代を象徴する商品開発がされています。私の代では弟が発案し、私がプロダクトデザインなどを手掛けた「FUDAN」という普段使いに使いやすい漆器を作りました。伝統的な秀衡塗は漆絵や金箔が入り、「普段使いには使いづらい」というお客様の声を反映し、その真逆の特徴を持った漆器にしました。現在では弊社の軸の一つとなるブランドとなりアイテムも広がりを見せています。
漆器づくりの仕事は、「漆器という器を使って食事をする国」というような、日本人のアイデンティティとも言える文化を守る、後世に残すべきものであると信じております。漆器が日本人にとって必要とされ続ける物である努力をしたいと思います。

若者へのメッセージ

私もまだ40歳で、経験豊富というわけではありませんが、お若い皆さんへお伝えしたいのは、弛まず努力することで何者にでもなれる時間が残されているということです。
現時点でネガティブな思考になったり、不安を感じたり、悲観したりする必要は全くないということです。そんなことよりも自分のやりたい仕事を考え、行動することで、目標に少しでも向かうように力を注いで欲しいと思います。
失敗を恐れずに自分の目的のためにチャレンジしていってください。数々の苦難は、皆さんが無難な人生を送ることなく、有難い充実した人生を送るための糧となります。